古株の反発を恐れないリーダー候補の新登用と従業員理解を得るコツ
リーダー育成
会社を経営するうえで、従業員を育てることは、売上や利益を生むのと同じくらい大切な要素です。
しかし、単に従業員を育てると言っても、経営者一人ではできません。任せられるリーダーを育成することが重要です。
もし「信頼できるリーダーがいない」「リーダーが欲しい」「リーダーを育成したい」と考えている社長や役員の方は、まずリーダー候補をリスト化してみましょう。
採用時や入社後数か月、1年程度は良い人材に見えても、半年から数年経てば従業員の働く姿勢は変わることがあります。まずは、さまざまな基準で候補を選出することから始めてみましょう。
リーダー候補に求める基準・条件は何ですか?
- 仕事ができること
- 人間性が良い
- 従業員から人気がある
- 自分の言うことをよく聞く
- 営業成績が良い
- クレーム対応ができる
- 不平不満を言わない
ただし、あまりに抽象的すぎる条件や、業績・数字だけにこだわるのは好ましくありません。バランスが重要です。
私が重視しているリーダー候補の条件
- 平等公正な人
- 人間ですから好き嫌いはあると思いますが、差別や偏見を持たないよう心がけている人材。
- 理解力の高い人
- 「1聞いて10分かる」とまでは言わないまでも、話をきちんと理解して要点を押さえられる。
- 仕事と会社に興味を持って考えてくれる人
- 単なる作業者ではなく、会社全体を俯瞰して考えられる。
- 周りに目配り・気配りができる人
- チーム内外で起こっていることに気付きやすく、フォローできる。
- 清潔感がある人
- 身だしなみや振る舞いが整っていて、周囲に好印象を与える。
- 誰にでも失敗を認め、謝ることができる人
- 自分の非を素直に認め、周りと良い関係を築ける。
最低限、この6個の条件は押さえたいところです。
あまり多くの条件を挙げすぎると候補がいなくなってしまいますし、「そもそも経営者自身はどうなの?」と疑問を持たれてしまう可能性もあるため、この程度に絞っています。
リーダーは「一線を画す」存在
リーダーは、従業員から見れば「一線を画す」存在です。言い換えれば、リーダーというだけで注目を集めるポジションでもあります。
これは非常にストレスがかかる、しんどい役回りでもあります。もちろん、能力は従業員を統率・リードするうえで重要ですが、人にはそれぞれ得意・不得意があります。
私がリーダーに求めるのは、尖った能力ではなく、及第点の安定した業績と先ほど挙げた6つの条件です。最大瞬間風速のような成果よりも、安定して長く続けてもらうことのほうが大切だからです。
従業員にとっても、給与が高く業務が楽な仕事が好ましいのはもちろんですが、実際には「安心」「安定」を求める声が多いものです。その環境づくりにリーダーの存在が大きく関わってきます。
リーダーに「自分のことを理解してもらう」
せっかくリーダー候補を選んでも、自分(社長や役員)の考えや目的・目標を理解してもらわなければ、リーダーになったときに経営陣の考えと「ズレ」た行動を取ってしまう可能性があります。それを従業員が目の当たりにすると、いわゆるダブルスタンダードな環境になりかねません。これは絶対に避けるべきです。
たとえ理解力が高い人を選んだとしても、自分の考えや思いが100%伝わっているとは限りません。二人三脚で相互理解を深めるトレーニングを重ねていくことが大切です。
リーダー自身に「できること」と「できる範囲」を設定してもらう
リーダーというポジションに就いたからといって、すぐに経営者が望む理想のリーダーになれるとは限りません。ここも二人三脚で、すり合わせをしながら進めてください。
- リーダーが「何ができるか」
- リーダーとして「どこまで責任を持てるか」
こうした範囲を明確にすることで、期待値のすり合わせがスムーズになります。
最後のステップ:チャレンジを与える
何かテーマを渡して、そのチームをリードしてもらいましょう。既存のチームで取り組んでみたいテーマや、新規プロジェクトを立ち上げてもいいでしょう。新しいテーマがなければ、今の業務をブラッシュアップするという形でもかまいません。
結果がどうであれ、他者を指揮・先導する経験をしてもらうことで、リーダー候補は「リーダーとは何か」を体感的に学び、またチーム内の意見を吸い上げて次のテーマにチャレンジする意欲も高まります。
こうした行動を繰り返すことで、良いリーダーが育つ第一歩となるのです。
リーダー選任におけるリスク
リーダー(部長や課長クラス)を育てることは、大変な作業です。
特に、長年働いてくれているベテラン社員ではなく、若い人材や女性社員をリーダーとして登用する場合、既存の組織や古株従業員から反発が起こることがあります。
しかし、これはそもそも経営者自身が、日々の業務を通じて従業員に対し「自分の考え」や「行動の原理」をどれだけ発信し、理解を求めているかに関わっています。
もし社長が常にブレない基準で人材教育を行い、従業員とのコミュニケーションを欠かさず行っていれば、時間はかかってもいずれは理解が得られるものです。
新しいリーダーを選任するときには、その旨をきちんとアナウンスし、前述のリーダーに求める条件や育成の流れを従業員全体と共有することが大切です。こうした情報共有が行われれば、組織内での混乱や反発を最小限に抑えながら、スムーズにリーダー登用を進められるでしょう。
まとめ
明日からでもすぐに実行に移せることばかりです。
- リーダー候補をリストアップし、基準を明確にする
- 経営者の考えをしっかり共有する
- 「できる範囲」を話し合いながら、チームを率いてもらうチャレンジを与える
少しずつ経験を積み重ねることで、組織にとっての有力なリーダーが育っていくはずです。ぜひ、実践してみてください。