良い上司と悪い上司
「誰にとっても良い上司」というのは、なかなか難しいものです。ただ、これまで私が見てきた“良い上司”は、指示を受ける従業員に対して、相手がしっかり理解できるように説明する力がある方でした。
“理解”の重要性
・自分がやるべきことの理解
・相手に指示する内容の理解
当たり前のように思えるこれらの点が、実際はできていない上司や指示を出す立場の人が多いのです。
「分かってくれるだろう」「これくらい言えば伝わるだろう」といった身勝手な(希望的な)思い込みで仕事を指示してしまう。結果、従業員の理解が追いつかず、従業員から見れば「悪い上司」の印象になってしまうわけです。
もし「悪い上司」程度で収まればまだ良いかもしれませんが、従業員のモチベーション低下にもつながりかねません。一方で、理解を促すように丁寧に説明できる上司であれば、多くの場合「良い上司」として支持され、「指示を聞こう」「頑張ろう」というモチベーション向上につながります。
良い上司の特徴
◇丁寧に仕事の説明をする
「なぜ必要か」「なぜやるのか」など背景や目的をしっかり伝える。
◇意見を求める
一方的に指示するのではなく、部下からの意見やアイデアを聞き出す。
◇聞く姿勢がある
部下の話を遮らず、最後まで聞く姿勢を持つ。
◇長所を見つけられる
部下の強みや得意分野を見出し、最大限活かそうとする。
◇良いことと悪いことの区別がつけられる
メリハリのある指導を行い、褒めるときは褒め、注意すべきことはしっかり伝える。
◇知ったかぶりをしない
知らないことは知らないと認め、部下と一緒に学ぶ姿勢を持つ。
悪い上司の特徴
◆意見を聞かない
自分の考えだけで突き進み、他者の考えや提案を無視する。
◆指示だけ出す
なぜそれをやるのか、何を目指すのかを説明せず、ただ「やれ」というだけ。
◆悪口や不満が多い
部下の前で他人や組織の批判ばかりを口にし、ネガティブな雰囲気を作る。
◆悪いことも例外で済ます
本来、処分や注意が必要なミスや不正を、曖昧に済ませてしまう。
◆知らなくても適当に答える
わからないことをその場しのぎの返事でごまかしてしまう。
このような態度や言動は、周囲の意欲を下げる原因になります。
Nobody is perfect.
完璧な人間などいません。
とはいえ、相手が理解していない状態で指示を出し、その結果だけを求める上司は、たいてい部下や他人の意見に耳を傾けず、「自分が正しい」と思い込んでいるケースが多いです。さらに、悪口や不平不満を頻繁に口にすることで、従業員のモチベーションを下げていることを理解していないのです。
悪口や不平不満が多い組織の例
悪口や不平不満が多い上司・リーダーの下では、組織が二分しがちです。
仕事自体が嫌なものに感じてしまう。
同調派
進んで悪口や不平不満を言い合い、もはや日常会話のようになっている。
それに同調しない人を排除するような風土が生まれ、組織が閉鎖的になる。
嫌気がさす派
そういった会話を聞きたくない、モチベーションが下がる。
ストレスがたまり、退社を検討するようになる。
具体例
私が過去に見てきた事例として、
従業員に協力してもらっているという意識が高く、業務を遂行する上で必要な情報や業務範囲をきちんと理解してもらえるまで説明するリーダーがいるチームは、人間関係も良好で業績も安定していました。
一方で、
悪口や不平不満が多く、高圧的な指示を出すリーダーのチームは、時に爆発的に業績が伸びることはあるものの、長続きせず離職率も高い。結果的に他のチームにも悪影響を及ぼすことが多々ありました。
極端な例ではありますが、後者のようなチームの業績に依存している社長や役員の方は、早急に是正を検討すべきでしょう。リーダーの任命責任は、その上司の責任でもあります。自分自身が範を示す形で、丁寧な説明と的確な指示ができるよう、リーディングしていく必要があります。
人材不足の時代だからこそ
人手不足の昨今、良い人材を求めることも重要ですが、まずは今一緒に働いてくれている人材を、より良い方向に成長させるための環境づくりに力を入れてみてはいかがでしょうか。
最後に、不平不満がまったく存在しない組織などありません。それぞれが、それなりの不満や不公平感を抱えているものです。しかし、それ以上にやりがいのある仕事やミッション、達成感を持ってもらうためには、丁寧な説明と従業員からの情報収集が欠かせません。
ポイントまとめ
〇良い上司は、相手の理解を促すための丁寧な説明ができる。
〇悪い上司は、部下の意見を聞かず、自分が正しいと思い込む傾向が強い。
〇悪口や不平不満の多い組織では、人間関係が悪化し、離職率が高くなる恐れがある。
〇リーダーを任命する側にも責任があるため、丁寧な説明・指示をリーダー自身が実践しながら、組織環境を整える必要がある。